中庭の出来事

恩田陸の文庫新刊。

中庭の出来事 (新潮文庫)

中庭の出来事 (新潮文庫)

……ナンというか……
相変わらず、恩田陸はよくわからん(笑)。*1


本書は、三人の女優が演じる「中庭の出来事」という芝居。
そして、ホテルの中庭で起きた事件。
とある中庭の出来事を語る男二人の話。


これらが入れ子に、入れ代わり立ち代わりして、一応、一通りの順序に並んでそれぞれがメタフィクションの関係にあるのかな、と思わせつつ。
個々のパートの関連性が直接的に結びついてしまうとおかしいシーンもあり。
曖昧と言うか、複雑怪奇でカオス的な調和のうちに、幕を閉じる。
読者の胸に、もやもやとした「食べたりなさ」を残して。


明らかに構成力が足らずに、思いつきだけで執筆し続けて、破綻してしまう作家もいるが。
恩田陸の場合は、確信犯的にこれを行っている。
思えば、デビュー作「六番目の小夜子」すらもそうであった。そのエンターテイメントとは対極に位置する作品性は、本当はメディアミックスとか向いていないんだと思うんだけど。
不思議なのは、TVドラマ化とか映画化とかされているんだよなぁ。
もっとも、その殆どは原作とは土台だけ同じで、キレイに再構成されたフツーのドラマになってしまっているのだが。
本書を読んで再確認したのは、恩田陸の作品性は、舞台演劇のそれに近い。ということだ。
万人に受け入れられるエンターテイメントではない。


そう思えば。
演劇を題材にした本書は、壮大なセルフパロディと言えるのかもしれない。

*1:註:ホメ言葉