スペース

瀬尾さんと駒子のシリーズ、第3弾。
加納朋子のこのシリーズは、本格ミステリでありながら、基本的に人死にの出ないちょっとした「謎」を題材としており、ミステリの中でも、一番好きなシリーズです……
ということで、実はポリシーに反して既に単行本を持っているので、中身は既読済みなんですが。
感想を書いた記憶があるのですが、blogにはありませんでした。
どこに書いたんだろう……

スペース (創元推理文庫)

スペース (創元推理文庫)

このシリーズのテーマは、「手紙」。
今回の「スペース」では、文通の片方の手紙が大量に示されます、約3か月分。
双方向通信の、片方向だけしか見えないので、全体像を把握するには、その空白……すなわち“スペース”を読み解くしかありません。
そこには、ちょっと複雑な人間関係と、ちょっとだけロマンティックでドラマティックな物語が隠されています。


収録の「バック・スペース」は、「スペース」の外伝と言うか、バックグラウンドの物語。
駒子の視点ではなく、手紙も出てこない。
あ、もちろん、駒子が手紙を書いているのを見るシーンはありますけど。
駒子を見ている、とある同級生の視点での物語であり、それゆえ「スペース」で秘められた真の物語とも言える。
ある人の過去も少し明かされたりして、このシリーズを読むためには必須であったりもします。
そしてやっぱり、読後感のいいハッピーエンド。
エピローグでは、数年後、「バック・スペース」の主人公から駒子宛に手紙が書かれます。時間軸的には一番未来で、駒子が卒業して何らかの仕事をしているらしいんだけど、そのことについて記述はありません。
瀬尾さんとの関係も……どうなんでしょう。


週刊アスキーの連載から9年、単行本から5年です。
新しい「手紙」が、楽しみだなぁ。