海の底

ようやくの文庫化、第2弾。
有川浩自衛隊三部作から、「海の底」が文庫化。
個人的には、図書館戦争アニメ化に乗っかって、大攻勢をかけてくると思ったんですが、意外と足が遅いですね。*1

海の底 (角川文庫)

海の底 (角川文庫)

突如、横須賀を襲来した巨大甲殻類“レガリス”。
そのレガリスと“戦う”。
つまるところ、「怪獣物」です。


本書は、二箇所のブランチから構成されています。
片や、レガリスから逃れるために停泊中の潜水艦に逃げ込んだ海自隊員2名と13人の子供たち。
片や、治安を守る警察側は、県警の対策本部と機動隊。


ガリスの正体を突き止め、対策を打ち、実際に戦うのは対策本部と機動隊の仕事です。
こちらは、おじさんばっかり(笑)。
まぁ、まともな職業警官なら仕方がない。
片や、潜水艦側は、自衛官2名はキャリアの一年目で研修中だから、せいぜい23〜24歳。
子供たちは最年長が、いわゆるヒロインで高校生。下は小学生まで。
この対比が、全てにおいて構成されている。


渦中のど真ん中にいながら、潜水艦と言う鉄壁に守られ、敵は自分たち自身と言う年少組。
事件を囲った外側にいながら、最前線で命を賭け戦い、タイムリミットと戦い、大義名分を整え、退治しなくてはならないのが年長組。


ガリスの襲来自体は、物語中でも「先人に倣え」と茶化されているように、ゴジラと同じような展開で対策は打たれ。
最終的には、無事に退治されます。
ガリスは、ゴジラのようにべらぼうに大きなわけでも強いわけでもない。
だから、退治そのものがクライマックスなのではなく、そこへ至る過程そのものがクライマックスなのです。
同じように、年少組は何度かの不慮の事態を除けば、レガリスと直接戦うわけじゃありません。
退治されるまでの6日間。
冷たく暗い潜水艦の中で、仲間たちや自分たちと向き合うことそのものがクライマックスなのです。


あとがきでも書かれている通り、二人の自衛官夏樹と冬原は、後の「図書館戦争」の堂上・小牧のプロトタイプであることは間違いない。
ヒロインは、随分と性格が違いますけどね(笑)。
でも、けなげでかわいいことは保障する。
あのラストで、惚れなかったら男じゃない。

*1:自衛隊」シリーズの外伝作である「クジラの彼」が角川から出ているので、これを文庫本化したくて、その前段階として各作品を文庫化しているんだと思ってたんですが。それにしても、ちょっと遅いですよね。