アイの物語

文庫化である。

アイの物語 (角川文庫)

アイの物語 (角川文庫)

……分厚っ(笑)。


単行本ではむしろ、薄いほうだと思っていたんですが。
意外に分厚いもので、600ページ近くあります。


この表紙をご覧いただければ。
角川書店の本気がわかるものです。


……山本弘で金を稼ぎに来てやがる!(笑)


ただ、このタイトルと表紙でキャッチィに売ろうとするには、この厚さはネックなんじゃないかなぁ、と思うわけです。
また、本書はもともとバラバラの媒体で発表された短篇を集めた短篇集なのですが、それにブリッジと最終話を付け加えることで一つの物語にまとめてあります。
ただ、その舞台が近未来、地上の支配者が人類からマシンに取って代わられた世界。
というのは……SF過ぎて、あの辺の読者層に受け入れられるんですかね?


販売戦略の心配をしてしまうのは、一時期、山本弘が本にならない、お金にならないと窮していた頃のことを思い出すからだろうか。


さて。
本書は、実にそれぞれの短篇が粒ぞろいである。
だが、何より僕にとって思い入れ深いのは、第2話「ときめきの仮想空間」が入っていることである。


この「ときめきの仮想空間」の舞台は、ヴァーチャル世界“MUGENネット”にあるテーマパーク「ドリームパーク」が舞台になる。
“MUGENネット”という名前は、実に山本弘らしくない。
それも当然である。
この作品は、ゲームクエスト誌*1に掲載された、V-GURPS・ドリームパークRPGを取り扱った小説だからだ。
V-GURPSもゲームクエスト誌も、時代の流れに飲まれ残念な結果になった作品だったが、本作だけでも人目に付くところにサルベージされたことは喜ばしい。
作品自体は実に直球で、そして最後の仕掛けはヴァーチャルものでは基本中の基本でありなおかつ、山本弘らしい技を見せてくれている。
雑誌では、桜瀬琥姫の描く可愛らしい水海やパンサが見られたのだが、流石に単行本には収録されていない。
それは、当時を知る僕らだけの楽しみだ。


V-GURPSへの思い入れを語ると長くなる。
今、スネークアイズに席を置く、神代さん、高槻さん、荻原。くんの3名が、初めて僕のGMする卓に入ったのがV-GURPSスペオペエリアだった。
そのセッションの内容は、今でも話に上る。
V-GURPSGURPSであるが故に不遇だった。
今でも、いっそナントカできないかと思うことがある。
……ナントカできないかな。

*1:コンプRPGから隔月刊でリニューアル創刊した。ちょうど1年で休刊となった。