RPG幻想事典 モンスター編2

伝説の武器を扱った「RPG幻想事典」、そしてモンスターを扱ったモンスター編の1巻に次いで三冊目の刊行。

新説 RPG幻想事典 剣と魔法の博物誌 ~モンスター編2~

新説 RPG幻想事典 剣と魔法の博物誌 ~モンスター編2~

ゲーム情報サイト「4gamer.net」のコラムだったのだが、残念ながら本巻に収録分、モンスター編の120回にて終了らしい。
http://www.4gamer.net/words/001/W00152/


その昔。
第一次TRPGバブルの成長期。
ソフトバンク新紀元社などから、このような資料本がよく出ていた。*1
今では信じられないことだろうが、コンピュータRPGもまばらでファンタジーの認知度は低く、今なら当たり前のエルフやドワーフ、ゴブリン、オーガと言った存在ですら、描写や用語の混乱が見られた。
その最たる例がドラゴンクエストのスライムだったりするわけだが。それは余禄。*2


時代は流れ。情報過多の時代になる。
LotR映画以降、エルフやドワーフがどんな存在か、知らない中高生はいないだろう。
その分、これら資料本の役割は、どんどんと専門化してきた。
新紀元社の「Truth In Fantasy」シリーズのラインナップが、戦車やUFOを取り扱ったり、「南総里見八犬伝」や「カエルになった王子様」と極めて範囲の狭い題材を取り扱っているのも、その専門化の極地と言えよう。


その反面。
文庫本などで、「世界の〜」と名をつけた、あるいはそれに類する解説本が近年多数出版されている。
これらの中には、非常に真摯で教科的に取り組んでいる本もあるが、そういった本は存外読みづらく、読みやすい本は内容が薄く他愛もない与太話で考証を避けている物が散見される。


その点、本書は実に良作であった。
取り扱うラインナップは、時に平凡でありながら、時にマニアックなものも取り扱い。
語りも軽快で読みやすく、偏りもない。
図版の面で言えば、折角サイトではカラーだったイラストが白黒だというのが残念だが、モンスターのイラストの場合、イラストレーターの実力が伴わずミスや改変が目立つものも多いが、本書のイラストでは大きなミスも目立たず、アレンジの範疇で収まっており安心して読み進めることができた。
一つにつき、このぐらいの分量が実に読みやすい。


願わくば、何らかの形で続けて欲しいものだ。

*1:というか、新紀元社からは今も出続けている。ナンと「Truth In Fantasy」シリーズは126巻だというから恐れ入る。

*2:厳密に言えば、「ドラゴンクエスト」のスライムは、「ハイドライド」や「ドルアーガの塔」のスライムを敢えて踏襲したものなので、誤用の範疇ではない。