容疑者Xの献身

湯川准教授が最初のイメージどおり佐野史郎だったら、今日の人気はなく、2時間ドラマのしぶーい作品になっていただろうことは予想できることなワケですが(笑)。
http://yougisha-x.com/
人気が続いておりますな、ガリレオ劇場版。


今回の場合、TV版とは大きくテイストが異なります。
湯川准教授とカオルのツンデレラブラブぶりを堪能したい人とか、明確に悪である犯罪者を湯川准教授があのポーズとあの曲*1で追い詰める推理活劇を期待していると、ちょっと期待外れになってしまいます。
正直、今回のカオル(柴咲コウ)は端役ですし。
いてもいなくても良い感じです。*2


今回の主役は、湯川ではなく、対決すべき「容疑者X」石神です。
湯川の帝大の先輩であり、不器量で不遇ながらも天才的な頭脳を持った善意の彼が、どのような献身を見せるのか。
今回のテーマはそれに限ります。
堤慎一の演技力、見せ方、テンポ、何れも手堅くホロリとさせられます。


相方は、俯瞰して見られたようなんですが、僕だとどうしても石神に感情移入してしまう。
僕に、同じような才能があれば、きっと石神と同じ選択をしたでしょう。
それだけに、このラストは……切ない。
真実を明らかにして、誰も救われなかった。そう思ってしまう。
……僕は、人の命はすべて平等に尊いとか、価値があるとかまったく思わないので。*3

*1:VS〜知覚と快楽の螺旋〜

*2:確かに、TV版同様、最後に、湯川を後押しするんですが、今回の場合、それはそれで後味が悪いので……

*3:人の命には軽重がある、と思ってます。誰だって自分の愛する人間のほうが命の価値は重い。逆説的に生きていないほうが人のためになる命があるとも思っています。それでも、人の命を奪えば罪に問われる、そういうルールの世界で生きている以上。そんなリスクを背負うほど馬鹿じゃないだけです。人はそういうものを倫理と呼ぶのだと思います。ちゃんと考えた上で踏みとどまるのが倫理、道徳。ただ「平等だ」「かわいそうだ」と口端に乗せるのは、ただの思考停止だと、僕は思います。