ソングシーカー〜失われた歌を求めて〜

ローズトゥロード リプレイ ソングシーカー (Role&Roll Books)

ローズトゥロード リプレイ ソングシーカー (Role&Roll Books)

[bk1はこちら]
Role&Roll誌に連載されていたRtoLリプレイ。
以前、絶賛しました小林正親の代表作になるであろう、一品です。
思えば、RtoLという作品は古くはツクダから発売された日本最初の国産RPGであり、その後、デザイナーの門倉直人が遊演体を起こした後、同社からビヨンド〜、ファ〜と二版を経て、現在のエンターブレイン版RtoLへ至る。
民俗学に深い門倉氏の作品として、和製トールキンと評されたこともあり、ビヨンド以降の魔法関連のルールは、人の手を越える神秘としての魔法を体現しているRPGには珍しいシステムである。
そんな魔法の不可思議さ、ままならなさは、このリプレイの中のプレイヤーの一言にも現れている。

この世界の魔法の前では、僕たちは無力ですね。

そして、この作品は、そんなRtoL、ユルセルームの魅力を伝える、という役割の他に*1、RPGの初心者がRPGに触れていく過程があらわに描かれている。
特に、最初の3話(1・2話が1回分なので都合2回)は、プレイヤーの持つ感覚と、GMの持つRPGゲーマーとしての基本的な発想やセオリーなどとのあいだで折り合いがつかず、迷走している。
一つの原因には、プレイヤー同士もまだ互いのコミュニケーションがぎこちない、というところもある。これが、第4話になるとプレイヤー同士の慣れに加え、鈴木銀一郎という(人生の)ヴェテランが加わったことで、急速にプレイヤーがひとつにまとまっていく。
さらに、この辺りから、その余裕もあってか、遊び方に対する変革が起こる。
例えば、行為判定一つをとっても、1・2話ではひとつの行為判定に色めき立っている。判定の失敗を、勝負そのものに負けたかのように悔しがっている。ところが、4話に来ると、失敗をネタとして消化することができるようになっている。
RPGというゲームは勝負ではなく、判定を通じて物語をつむいでいくものだと言う理解が深まってきたからに他ならない。
こういった感覚は、逆にRPGに慣れてしまった僕たちには新鮮だ。そして、こういうことを思い起こさせてくれるこの作品は、間違いなく一つの良い教導書であろうと思う。
ゲーマーは必読をお願いしたい。

*1:プラス、小林正親本人の魅力を伝えている部分や、相棒である井上鮭の魅力も充分に伝わっているとは思いますが。