ライトノベルを読むべきか!?

山本弘のblogで「ライトノベルを応援します」という内容が書かれた。
キッカケは有川浩シアター!」。


まぁ、かつての演劇人だった僕の。
シアター!」への思い入れやシンクロ率はヤバイ状態なのは、この辺を見れもらえればわかるとおり。
まぁ、その後に何度も読み返し、そのたびに悶絶する。
このテーマだけで、一晩語りつくせる。
書いたら切りないけど。


それはさておき、ライトノベルである。
http://hirorin.otaden.jp/e82346.html


自分も、かつてはライトノベルを愛した。
いや、今も愛していると言える。
ただ、新しい作品を追いかけるだけのヴァイタリティが、最近、欠けてきたようには感じる。
かつては、デビューした新人の作品は一作は必ず読む、と意気込んでいた時代もあったが……それも遠い昔。
今は、この系列はTRPG関連と継続して読んでいる数作で手一杯だった。


こいつわイカン!
と、山本弘がピックアップした作品からとりあえず二作を通読。*1

パララバ―Parallel lovers (電撃文庫)

パララバ―Parallel lovers (電撃文庫)

なるほど。
確かに、高畑京一郎タイム・リープ』の影響下にある作品だ。
ある日、恋人未満の村瀬一哉が死んだ。
悲しみに呆然とする綾は、いつものように彼の電話番号をダイヤルする。
決して出ない相手を呼び出すはずのコール音。
……だが、それは一哉に繋がる。
パラレルワールドの村瀬一哉の元に。その世界では、死んだのは綾だという。


ある一点で分岐した二つの世界。
その差異は、その日死んだのが村瀬か綾かということ。
何故二人は死ななければならないのか、何故二つの世界は分岐したのか。
二つの世界の差異を詰めることで、二人は真実に近付いていく。
ある種のミステリと読める。


ただ……読後感がなぁ。
初恋を喪失し、それを受け止めるまでのワンクッションと捉えれば、捉えられるが。
残酷な夢と言えば、そうとも取れる。
難しいテーマである。


紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

本書は、表題作*2とその続編というか番外編というかそういう感じの「1/1,000,000,000のキス」を中心とした物語。

毬井ゆかりは、ニンゲンがロボットに見える。

他の人と異なる認識の元に生きている毬井ゆかり。
人は認識によって、その人の「世界」を形作っていくが、「ニンゲンがロボットに見える」彼女にとって、他の人が見る世界と、どう共存していくのか。
それが、描かれている。
ただ、それだけ壮大なテーマであるにもかかわらず、実はこちらは短篇として書かれているため、思ったよりアッサリしている。


二話目は、毬井ゆかりが死んだところから物語が始まる。
ゆかりの友人だる学*3は彼女を救おうと、それはもう想像を絶する能力を身につけ、様々な手段を講じるのだが……
ナントイウカ。
グレッグ・イーガン山本弘かというような、壮大な物語。
「主体性」という言葉の意味がウヤムヤでクラクラしそうな、そういう物語。
なるほど!


ただ、個人的には第一話のテーマのほうが好み。
二話の「時間改変」というネタは、僕のツボではあるんだけどねー。



さて、それはそれとして。
山本弘のblogの内容。

 有川さんは演劇の世界のこととして書いてるけど、これ、明らかに小説業界を念頭に置いてるよね。

……


私は掛け値なしの山本弘のファンだが。
それだけに、この内容はイタイ。痛々しい。


自意識過剰に見える。


シアター!」は素直に直球、演劇業界の話だ。
件の部分も、純粋、極めて、演劇業界に携わっている人間の、生の本音そのままだ。
あんまり、比喩とか隠喩とか考えてないと思う(苦笑)。
もう10年以上前、いやきっと30年前ぎらいからずーっと。小劇場の世界では、あんなヘンテコな価値観がまかり通っていた。
でもそれは、出て行った人間しか、口に出来なかった言葉だった。
それを現役の、才能ある人間が口にするから価値がある。というフィクションなのだ。


とりあえず。
それ以上を求めるのは、過ぎると思う。


僕は山本弘は好きだし、ライトノベルも好きだ。読書の半分近くはライトノベルだ。
でも、ライトノベルライトノベルだ。
名作もあるだろうが、スタージョンの法則通り、愚作も多い。
文学になるかというと……それは文学を学んだ人間にとっては莫迦にされているのと同じ言葉になる。その程度の水準のジャンルだ。


かつて、SFも。ミステリも。
自ら囲いを作ってしまったことで閉塞した。
ライトノベルも、ライトノベルと名前を付けてしまったことで閉塞しているような気がする。

*1:選抜基準として、僕はギャグは好きではない、というのが上げられる。そこで「ニャル子さん」は真っ先にはじかれる(笑)。

*2:初発表時のタイトル、本書内でのタイトルは「毬井についてのエトセトラ」。

*3:男性名だが女性。そもそもゆかりとの出会いは、ロボットに見えるため男女の区別がつかないゆかりが、「学」という名前のニンゲンの性別を悩んだことに端を発する。