てるてるあした

「ささらさや」に続く、姉妹編。

てるてるあした (幻冬舎文庫)

てるてるあした (幻冬舎文庫)

「ささらさや」は、サヤが佐々良というふしぎな地にやってきた話で、こちらはその後、「てる」という女の子がやってきた話です。


まぁ、佐々良は埼玉県ということになっておりますが、かなり旧い土地に見えます。
今日日、ここまでちゃんとした人間関係が残っている町など見たことがない。
……まぁ、あまり都会に住むことができる人間にとっては必要がないものなので、見えないだけかもしれませんが。


ただ、一つ、僕として気になるのは、サヤにせよ照代にせよ、都会から社会的にはじかれて佐々良にやってきていること。
まぁ、そういうキッカケ。
照代風に言うなら「特別なこと」がなければ、物語が始まらないのは事実。
でも、何となく釈然としない。
何故かというと、そのキッカケ自体が……腑に落ちないからだ。
加納朋子の作品は、本当に上品で折り目正しい。邪悪な存在が居るのを見たことがない。今回の照代のケースであっても、許されるべき事象として描かれている。……でも、現実には「邪悪」としか表しようがない人間がいるのも事実。
そんな現実世界と加納世界とのふしぎな摩擦を、僕はここに感じる。


多分、それが、僕が「ささらさや」が加納朋子作品で一番好きではなかった理由かな。*1
まぁ、「ささらさや」「てるてるあした」がミステリではない、ってのも一番の理由かも(笑)。


ちなみに、後書きで成井豊がこの二作が加納作品で一番好きだと書いています。
そう言えば、この二作は成井豊脚本でドラマ化されましたっけ? あの枠は前作「雨と夢の〜」のほうで、違うな、と思って切っちゃったんだよね。
私の周りでは、少し前の演劇人が多いので、キャラメルボックス成井豊を好きだという人間が多い。
ただ、僕は……キャラメルボックスの芝居自体は嫌いではない。
でも、出版物とか読む限り、僕は成井豊をあまり好きではなかった。
多分……、こういうところの感性が、かみ合ってないんだろうなぁ(苦笑)。

*1:「嫌い」という意味ではない。他の作品ほど、好きではなかった、という意味。