シアター!

いた、いたたた……

シアター! (メディアワークス文庫)

シアター! (メディアワークス文庫)

メディアワークスから新たに創刊したメディアワークス文庫
そのコンセプトは「電撃文庫で育った大人たちに」だそうで。
言うなれば、角川スニーカー文庫に対する角川文庫。富士見ファンタジア文庫に対する富士見文庫(笑)。*1
その初回配本には、「図書館戦争」の有川浩の書き下ろし!


すごい。


もう、その一言に尽きる。
読み終わって、その熱冷めやらずでもう一回読んで、それでも物足りなくて三回目を怒涛の勢いで読んだくらい。
……まぁ、これは僕個人の問題なのかもしれないけど。
いろいろとシンクロして、共感しまくる作品であったのは確か。


本作は、東京のとある小劇団を舞台に、三人の男女の物語が繰り広げられる。
司と巧の春川兄弟、そして物語のきっかけになったヒロイン、羽田千歳。


劇団シアターフラッグは、春川巧を主宰とした劇団。
大学を卒業して、定職も就かずにフラフラして、と兄の司は苦々しく思っている。
司自身は芝居にはまるで興味のない、無敵の営業力を誇るサラリーマン。
千歳の登場で初めてやる気の芽生えた巧、それは野心と言ってもいいだろう。
だけど、その巧の前に立ちはだかる現実。
元制作が残した300万円の借金。
司は弟に告げる、300万円を貸す代わりに条件がある、と。


本作は、司と巧という兄弟が、演劇と言う言葉で互いに向かい合う。
そして、シアターフラッグという劇団が、「商業的に金を稼ぐ」ということに正面から向き合う話である。


ホント、あちこちチクチクするわ(苦笑)。
でも、学生の頃はわからなかった。
まともな社会人になったからこそ、司の言っていることが本当に心から良くわかる。
夢と現実をどう着地させるか、それが如何に難しいか。


だけど、そこに三人の、恋愛未満の三角関係が甘酸っぱくも描かれていて、ドライな物語を読みやすくしている。*2
ホント、有川浩はラブコメ上手だわ……。


夢を見ている人、これからも見続けたい人にはぜひ読んで欲しい。

*1:昔、そういう文庫があったんですよ。富士見書房が時代劇とかくりぃむレモンとか出してた頃に。

*2:一人は三十路だけど(笑)。