モノレールねこ

先月の「てるてるあした」に続いて、もう1冊。*1
加納朋子作品の文庫化。

モノレールねこ (文春文庫)

モノレールねこ (文春文庫)

表題作含む、8篇からなる短篇集。
こちらは、いつもの「ちょっと不思議なできごと」を題材にしたミステリチックな話から、どちらかというとオカルトっぽい話、果てはザリガニの視点で描かれた言うなればファンタジー作品まで幅広い。
まぁ、全体で言うなら、加納朋子独特のふんわりとした世界での、ちょっといい話。である。


「てるてるあした」の時にも書いたが。
加納朋子の世界は、愛にあふれている。
その世界には“悪人”、ひいては“悪”が存在しない世界だ。
だけど、僕らが住んでいる世界はそうじゃない。“悪”意で溢れている。
本書で言うなら、僕は「マイ・フーリッシュ・アンクル」には断絶を感じる。*2
この作品は、ニートの叔父をやさしくあたたかーい目で、ハートフルに描いている。


……ニートを!?


僕は、弱いことや、愚かであることは、罪であると思っている。
厳密に言えば、その存在自体ではなくて、それに甘えたり、それを言いワケにしたりすようになったら、僕は間違うことなき“悪”であると断ずる。
だって、僕らは同じ環境でもガンバって生きてるもん。
愚者や、弱者は、同じ世界で努力している人間の足を引っ張っている。
だから僕らは、彼らを、断ずる権利がある。


それでも。
家族にニートがいるような人々の立場からすれば、いろいろと事情はあるのかもしれない。
家庭の中で、完結しているのであれば、それでもいい。
……でもそれは、決してハートフルなストーリーに仕立て上げることではないと、僕は思う。
加納朋子は全面的に好きなんだけど、時々、こういう断絶を感じるよなぁ。特に最近(苦笑)。

*1:てるてるあした」自体は2月の刊行らしいんですが。気付いてませんでした(苦笑)。

*2:「パズルの中の犬」の母親にも、僕には決して許しえない“悪”があるのだが。